ヘルメン

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 オリエンテーションは五人一グループで大学敷地内のチェックポイントを回ってスタンプを集めるという企画だったが、俺と藤井の二人は、イベントに積極的に参加するよりも適当に参加している振りをするだけのほうが性分だった。だから先輩の手書きの地図とにらめっこしながらチェックポイント探しをするのは前衛三人に任せて、俺と藤井は甲斐性もなく三人のあとを付いていった。  ただただ一時間も無為に歩かされるのは精神的に辛いので、俺たちはぽつぽつと会話をした。 「趣味は?」  名前、出身を聞いた後、藤井はお見合いみたいにそんなふうに質問してきた。 「ギター弾いたりとか、まあ音楽かな」  俺はまだギターを買って数年であり、簡単な曲の弾き語りができる程度だった。 「マジ? ギター弾けるのかあ。いいなあ。じゃあ音楽系サークル入るつもり?」 「いや、完全に趣味っていうか。バントやったりとかは興味ないんだ。一人で楽しめればいい」
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