〖第1章〗第1話 再婚相手の家族

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〖第1章〗第1話 再婚相手の家族

 今、俺(立花颯太)はとてつもない事実を知った。学校一の美人と言われるクラスメイトの島崎咲希と家族になるらしい。島崎は成績も優秀だし、運動も中々にできる。オールパーフェクトの女子高生。しかし、島崎と家族になるなんて夢にも思わなかった。まずなぜこうなっているかを一から説明する。  春を迎えてもう1ヶ月が過ぎて、高校生活にもある程度馴染めたある日曜日の朝、父さんから驚きの発表を受けた。それは、父さんが再婚したということ。母親という存在は僕が3歳時にはいなかった。  離婚したわけではなく、ガンで亡くなってしまったらしい。父さんは男手一つで俺を育ててくれた。それは凄く感謝してるし、父さんには幸せになって欲しいと心から思っていた。この報告は是非とも祝福したい。そして父は、 「来週の日曜日に顔合わせをするから」  と俺に言った。新しく家族になる人たちに会うのだから、いつもは陰キャで学校でも目立たない俺だが少しは身なりを整えて行こうと思った。そして、学校帰りに床屋に行って髪を短くしたりして、日曜日のために準備をした。  そして今だ。顔合わせということで少し高級なホテルのレストランにいる。そして目の前に島崎がいる。もう訳がわからない。父さんと島崎の母は仲良く話している。なぜだ?なぜこうなっているのだろうか。父さん曰く、社内恋愛だったらしい。  にしても、学校一の美人さんの母と結婚だなんて。どんな確率だよ。俺も島崎もこの現状を理解できておらず、プラスして緊張で言葉が出てこない。  しかも、クラスメイトなのに一回も話したことない。それはなぜか。答えは簡単。島崎が高嶺の花だからだ。俺みたいな陰キャは教室の端でスマホでも見てればいいから、わざわざ島崎と話そうとは思わなかった。  しかし、今はそんなこと言ってられない。俺はどうにかして話さなければと思い話しかける。 「あのー、俺のことわかりますか?クラス一緒なんですけど。」  すると、島崎は 「ひぇっ?」  とびっくりしたような声を出した。俺はもう一度、 「俺のことわかりますか?クラス一緒なんですけど。」  と声をかける。こっちは勇気を出して話しかけているのに返事がない。やっぱり陰キャには興味ないのか、と思っていると、 「わ、わかってます。同じクラスの立花くんだよね。うん。知ってる。」 「あっ、知ってましたか、俺のこと。いつも教室の端にいるのに。」 「クラスメイトの名前くらいはわかる、と思う。自信ないけど。」  たどたどしい会話だけど、少しは話せた。大きな進歩だ。隣では、まだ父さんたちは仲良く話している。こっちの状況も少しは確認してくれと思うが、そう上手くはいかない。また、俺と島崎の間で沈黙が生まれた。どうにか会話をしなければ。 「「あのー。」」  ハモった。俺は先に話していいよと言う。島崎は 「立花くんは私のこと知ってる?」  と聞いてきた。当たり前だろ。知ってるよ。学校に入学して、初めて登校したときから学校の先輩たちが1年に可愛い子がいるとドンチャン騒ぎになっていたんだから。どんな子かなと思ってたら、同じクラスだったんだからさ。そして俺は─── 「知ってますよ。初日に登校した時から騒がしくなってて、何事だと思ったら可愛い子が1年にいるって先輩たちが言ってました。それが島崎さんのことだったので。」  と言った。あえて可愛いとか言ってみた。機嫌取りみたいなもの。俺みたいな陰キャでも家族になるのだから、少しは仲良くなろうとしただけ。なのに返ってきたのは意外な一言。 「私が可愛い?」  こいつ自分の容姿見てないのか?
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