生き返る坊

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生き返る坊

それは私が眠ろうと目を閉じた時だった。 ガサガサと襖の外で音がして、ドスンと土の上に何かが落ちる音がしたのだ。 鬼神である私が何を怖がるも無いが、しかし気配が人間であった為知らんふりをして面倒ごとに発展するのも嫌だ。 静かに襖を開けると、そこには血まみれになって動かない男が横たわっていた。 「おお、これは困ったな。生きてるのか死んでるのかわからん」 そこら辺にあった木の棒でつついてみても何も反応がないところを見ると、死んではいなくても天国は近いと見た。 私は彼を静かに抱き上げ、血で汚れた服を静かに剥ぎ取る。 身体中に傷があった。どうしようも出来ないほど深くまでえぐられた傷もある。 「ゆっくりと、おやすみ……」 きっと明日の朝までに息を引き取るだろう。 早く死ぬにはあまりにもったいないほど、美しい青年であった。 私は自らの布団の横に風呂敷を何枚か重ね、青年の細く柔らかい四肢を寝かせた。 「ふぁ〜あ……眠い眠い。それでは、おやすみ。」 ___ 清い朝日が目を照らす。 春うららかな優しく眩しい光で目を覚ます。 この柔らかい当たりの日差しは好きだ。隣に死体が無ければ、もっと良い日だったのだが……。 朝から死体の片付けか……と思い身を起こす。 「お、に………」 「むむ?」 裸の青年がこちらを見ているではないか。 「坊、昨日死んでいたではないか!」 「し、死んでなんかいない!現に僕はこんなにピンピンしてる」 「あらぁ〜傷も綺麗に治っちゃって、坊ちゃんやるじゃない……ってんなわけあるかぁ!」 「鬼もノリツッコミするんだ…」 朝から疲れる。私は青年の肌がどこも綺麗に治っているのを確認する(青年の坊が変態を見る目で私を覗いてきたのは心外だ!)。 「驚くことに…全く治っている。お前は人の子か?それとも、私のように人の形をした神であるか」 「僕は神じゃないし、実際に昨日死ぬ思いをした。混乱しているのはこっちの方だ」 ふむ、確かにそれはそうだ? そして今ふと気づいたが、坊の下に敷いてある風呂敷……それはこの前呪術師が置いて行った土産物じゃないか。 「ははん。わかったぞ坊。そのからふるな風呂敷が原因だ。」 「こっ、これが?」 「それはつい先日、私の介抱をする呪術師が置いて行った、術のかかっている風呂敷だ。なんでも、それを体の治したい場所に触れさせて寝ると、次の朝目覚めた時には治しているという代物。」 「じゃあ僕、本当に生きてるんだ……!!」 「らっきーだったな坊よ。その風呂敷、本来は神や高等な生き物だけに使われるものだ。お前は何か知らんが徳を積んでいたようだな。下劣な者が触れれば命を奪うように出来ているらしい。ま、命拾い上等。」 やったー!と舞い上がっている坊を見て、久しぶりの人の子の面白さに少し味をしめた私だった。
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