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17.真夜中の別れ
マクシミリアンが北の塔から解放されてから数ヶ月が経ち、ユリアが父から得た猶予期間が残り少なくなった。相変わらず面会謝絶は続いており、ユリアは公爵家の諜報員からマクシミリアンの状態について知らされていたが、会うことは叶っていない。
阿片中毒の症状はゆっくりながらも改善しつつあり、マクシミリアンはおむつをしなくても排泄に失敗することは少なくなった。でもまだ突然笑いだしたりして完全に正気とは言えず、残り僅かな期間で婚約続行の許しが得られそうな状態にはなりそうもない。
マクシミリアンは、調子がよい時は日中も寝台でウトウトしているので、夜も眠りが浅い。
「……ックス。マックス」
誰かが呼ぶ声が聞こえ、マクシミリアンは目が覚めた。
「……誰?」
「私、アナよ。よく聞いて。貴方の面会謝絶が解けても、私は多分もう貴方に会いに来れない」
マクシミリアンの寝台の脇には、男装姿のアナが立っていた。
「どうして?」
「私達の関係をよく思わない人達のせいよ」
「ヤダ!ヤダ!ヤダ!アナが来なくちゃ阿片を吸えない!早くちょうだい!ちょ………んぐぐぐ」
マクシミリアンはパニックになりかけた。アナは急いでマクシミリアンの口を塞いだ。
「シーッ!静かにして!誰か来たら私が捕まっちゃうわ」
アナは持ってきた布袋をマクシミリアンに渡した。中には吸引道具と阿片が入っていた。
「貴方が欲しがってたものよ。ちゃんとここに隠しておくのよ」
アナがナイトテーブルをずらして敷物をめくると、床下収納の扉が現れた。
「いっぺんにたくさん吸わないで。1日に吸う量は守ってね。吸うのは夜中だけにして。吸った後は窓を開けて換気すること。わかった?」
「うん…」
「そうしないとすぐに見つかって取り上げられるからね。注意するのよ」
アナはマクシミリアンの頭を抱えて唇を重ね、舌を割り入れて絡めた。
「んん…んん…はぁ……ねぇ、また一緒に寝よう?来て」
「だめよ。長居は危険なの。元気でね、さようなら」
アナにはマクシミリアンが今や性的に何もできないことはわかっていたが、それでもいい歳をしておむつをしなくてはいけないような男と同衾はゴメンだった。
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