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第2話① 『突然、閉店宣告』
「う、うちの店が閉店!?」
シュウイチは、それを聞いたとき、目を丸くした。
「大変申し訳ない、河中君ー」
本社所属の上司、加賀美が言った。
加賀美は、シュウイチの店舗エリアを管轄している、いわゆるエリア担当者である。
「実は、このエリアは採算が悪くてね。周囲の人口も減少傾向にあるー。しかも、うちの会社含め、ファミレス業界はどこも競争が激しくてね。それに、河中君の店舗は、今年の決算で赤字の見込みなんだよ。だから、本社会議でこ閉店リストにこのお店が挙がってしまったんだー」
シュウイチは、「売上」やら「人口」やら「赤字見込み」だの、加賀美が何を言っているのかよく理解できなかったが、うちの店が潰れてしまうということだけは理解できた。
「この店が潰れたら、私はどうなっちゃうんですか?」
シュウイチがボソッと質問した。
「そうなると、大変申し訳ないが、君には違う部署で働いてもらうことになる。おそらく次は店舗勤務ではなく、営業を担当してもらうことになるかもしれないー」
シュウイチは、それは絶対に嫌だった。
今の仕事が好きという訳ではない。しかし、やっとの思いで身に着けた知識と経験が、次の職務にも活用できるほど、器用ではないからだ。
このルーティン化された仕事ができなくなるのが嫌だった。なんとも自堕落な性格ともいえる。再度新たな仕事にイチからチャレンジするなんて、シュウイチの性格からは想像できることではない。
(まずいことになってしまったー。)
シュウイチは、即座に「転職」の二文字が頭に浮かんだ。
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