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第3話 『加賀美の考え』
「はい、赤浜通り店の河中です。」
恐る恐る電話に出ると、電話の相手は、加賀美だった。
「おお、河中君。元気だったかい。」
「全然、元気じゃないですよ。今後のお店のことで頭がいっぱいです。」
「それもそうか。まあでも河中君は、会社を首になるわけでもないし、まあ、そんな大したことではないよ。」
加賀美は、さらりと言った。
シュウイチは、加賀美との認識の違いに動揺したが、店舗閉鎖について率直に質問をぶつけてみた。
「うちの店舗は、売上が500万円もあるのに、どうして閉鎖するんですか。年間だと6000万円くらいの売上ですけど。これって悪くはない方だと思うんです。それに職場のみんなもとても働きやすい職場だといっているので、閉店するのはもったいなくないですか」
シュウイチは、素直に質問を投げかけた。
「うーん、その件なんだがね、実は本社でも意見が割れているんだ。君の店舗は確かに売上がきちんとあがっているから、その店舗を閉鎖するのはもったいないんじゃないかってね。」
シュウイチは、「そのほうがいいに決まっているだろう」と口に出してしまいそうになったが、ぐっとこらえて、
「じゃあ潰さなくてもいいじゃないですか。」とシュウイチは言った。
「それなんだよ。実はのところ、僕は、もし君の店舗が今後もずっと黒字になるようであれば、潰さなくてもよいと考えているんだ。一応、私が担当しているエリアだからね」
加賀美は続けて提案した。
「どうだい、河中君、私のためにも君の店舗の業績を改善させてくれないかい。」
黒字なのに業績改善という言葉に、違和感を覚えたが、それよりも今の仕事をやめたくない一心で、無計画にも「やります!」と元気に返答した。
「河中君なら、そういうと思っていたよ。じゃあ、少し本社の人間とも交渉してみるよ。閉店の話がなくなるかは、河中君の頑張り次第だよ。」と加賀美は言った。
「ありがとうございます!」
シュウイチは、自信満々で電話を切った事に、猛烈に後悔した。
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