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運転席からはスーツ姿の初老の男が降りてきた。
彼はわたしたちを見て軽く会釈すると、後部座席のドアを開いた。
わたしたちはそこから誰が降りてくるか知っている。
この町、いや周辺の町を含めても一番の金持ちで、わたしたちのクラスメイト、「麻生聖花」だ。
「お嬢様 どうぞ」
「ありがとう、柏原」
聖花はモデル級の見た目で大人っぽい印象の女の子だ。
実際に子役タレントとしてスカウトされたことが何度もあるようだった。
しつこく勧誘する有名な芸能事務所を断るのに一苦労だったと前に自慢げに話していたのを聞いたことがある。
彼女はブランドものの白いワンピースを揺らしながら、早足でわたしたちの方へと近づいてくる。
聖花は天晴が持っているわたしのスマホを見た。
彼女はなぜか満足そうに微笑んだ。
「鈴音!あなたがスマホを買ってもらったって聞いたから、どんなものか見にきてあげたわけ!」
聖花はいつもわたしに言いがかりをつけてくる。
理由はわからないけど、もう慣れっこになってしまった。
「そのためだけに公園に車で来たってこと?」
「そうよ!どうせデイズグラムをはじめても誰もフォローしてくれないでしょ?」
「だからこのわたし、麻生聖花があなたのフォロワーになってあげようと思って!」
聖花は大げさに胸に手を当てた。
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