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あたしはペットボトルを落としそうになった。
腑に落ちる感覚なんて今まで知らなかった。
でも麻美先輩の言葉は、ガチガチに縛られて窒息しそうだった体の隅々に心地よい風を吹かせてくれた。
体内の風通しが良くなると、初春の空気が美味しく感じられた。もしかしたら、これが自由を得た、という感じなのかもしれない。
──と、そのとき。
ヒュッと鋭く風を切り、何かが飛んできて、先輩の肩に突き刺さった!
これは、
ボウガンの矢だ!
先輩が倒れながら、梅の木の方を見て呻く。
「⋯くっ、琴吹、利奈⋯っ!」
あたしもそちらを向く。そして驚く。
「美沙!」
混乱したあたしは足が竦んで動かなかった。
何で美沙が! 何で先輩を!
大量の血が拡がっていく。
通報しなきゃと思ったら、先輩に止められた。
あたしは訳が分からなくなって、痛くもないのに痛いみたいに、涙と叫びを溢れさせるしかなかった。
おわり
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