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第56話(BL特有シーン・回避可)
荒い息をつきながら、シドはもどかしそうな手つきでハイファのドレスシャツのボタンを外し始める。スラックスから裾を引き出し、前を開いて腹から胸を露わにした。白くきめ細かな肌にそっと触れ、次には噛みつくように胸に顔を埋めていた。
小さな胸の尖りに歯を立てられ、ハイファは躰を跳ねさせる。
「んっ、あ……シド……はぁん」
「ハイファ、っく……ハイファ!」
熱い舌が胸から腹を幾度も這った。ハイファは喉を仰け反らせてシドの頭を抱く。柔らかな黒髪をかき回しながらシドの舌と手での愛撫に酔った。至る処をまさぐる手が下降し、スラックスのベルトを緩められる。
やや強引に下着ごと下衣を引き下ろされ、既に勃ち上がったものを露わにされた。握り込まれてきつく扱かれ、甘い痛みと羞恥に身を捩らせる。
「シド、きつ、い……いや、ああんっ!」
「本当に嫌か? 嫌ならやめる」
「……んっ、シド――」
躰の力を抜くとシドに背を支えられてドレスシャツの袖を抜かれた。銀の髪留めを外され、下衣も全て引き剥がされ、白い肌を余すことなく晒され横たえられる。シド自身も素早く全てを脱いで潔く身を晒した。逞しい躰のあちこちにどす黒い打撲痕があり象牙色の滑らかな肌を染めている。哀しい想いで見上げたハイファにシドは再び躰を重ねた。
「シド、無理しないで」
「無理なんかじゃねぇよ、もうお前を我慢する方が無理だ」
「そっか……じゃあ、して。思い切りして」
「ああ、思い切りな」
いきなり喉に噛みつかれ強く吸い上げられる。喉だけではない、肩から首筋のラインを何度も舐めねぶられ、赤くシドの証しを刻み込まれて陶然とした。その間もシドの片手は知り尽くしたポイントを愛撫し、片手はハイファの熱くしたものをきつく握って扱いている。
「あっふ……シド、そんなにしたら――」
「いい、いきたければいけ。我慢するな」
「んっ、あ……シド……あうんっ」
身を捩らせてハイファは溜まる疼きに悶えた。きつくも心得たシドの攻めはハイファを快感の海に投げ込み溺れさせる。一人でいきたくない、逸らしたいのに躰は勝手に反応して細い腰が浮いた。更に速く扱かれて、放出したいという欲求で他に何も考えられない。
シドの手の中でハイファは自身を変化させてしまうのを我慢できなかった。
「ああっ、だめ……いく、いっちゃう……はうっ!」
何度もハイファは細い躰を震わせて迸らせた。シドの手に白濁を溢れさせる。思考が白くなるほどの快感を味わい、ハイファの全身からぐったりと力が抜けた。
そんなハイファの膝を立てた細い脚をシドは押し開いた。ハイファ自身の放ったもので濡れた指で、露わにした淡い色づきをなぞる。ひくつくそこを何度もなぞってから硬い蕾に一本目の指を挿入した。途端にハイファは鳥肌の立つような快感に身を硬直させる。
「ハイファ、力、抜け。傷つける」
「んんっ、あ、はぁん……ああんっ!」
返事をしようにも言葉にならないらしく、ハイファは身を固くしたまま甘く高い声を洩らし続けている。シドは宥めるように白い太腿を撫でながら、ちぎられそうに締めつけてくる狭い窄まりを馴らすべく、何度も指を抽挿入しては根元まで埋めた。
これ以上無理なくらいに深爪した指で何度もポイントを突き、掻くと、ハイファは長い髪を乱してシーツを掴み締める。危ういような美しさを目に映し、シドは性急に指を増やした。
「ああん、シド、そこ……いい、はぁん!」
「ハイファ……もういいか?」
狭いそこに数指を咥え込む情景に堪らなくなり、シドはハイファが頷くなり指を全て抜く。快感を追って腰が揺れ、そんな仕草さえがシドの胸を愛しさでいっぱいにした。
もう我慢できなかった。張り裂けんばかりになっている己のものをそこにあてがう。
「入っていいか、ハイファ?」
「きて、シド。貴方で僕を埋めて……あっ、あっ――」
怒張した切っ先で引き裂いてしまわないようシドはゆっくりと腰を進めた。ハイファも完全に躰を開き、太いシドを迎え入れるために努めて深い呼吸を繰り返している。
「ハイファ、つらくねぇか?」
「つらくない……だから思い切り入れて、突いて……あっ、はうんっ!」
誘われるままに途中から根元までを突き入れてしまいハイファに悲鳴のような声を上げさせた。指とは比べものにならない太いものを芯まで届かされ、苦しくない訳がない。だがハイファの中はきつくも温かく柔らかで、包まれたシドは急激に昂ぶった。
何度も深く息をついて昂ぶりをやり過ごし、緩やかにハイファを揺らし始める。
「ああっ、シド……すごい、いい……気持ちいいよ」
「俺も、ハイファ、最高に気持ちいい――」
力強い腰の律動は徐々に速くなってゆく。離れてしまう寸前まで太い茎を引き抜いては細い躰に打ち込み貫いた。いつしかハイファもシドの動きに合わせて細い腰を揺らしている。
蠕動する内襞に絡みつかれるシドも、擦り上げられて高い声で喘ぎ続けるハイファも、目の眩みそうな快感を得ながら、更なる快感を生むべく上下から腰をぶつけ合った。
唐突に絶頂感が突き上がってきてハイファが叫ぶように訴える。
「もう、シド、僕、だめ――」
「待ってろ、俺もいくからな」
細い腰を片手で掴んだシドは腰のスライドを速く激しくした。片手はハイファを握り込む。幾度かきつく扱き上げ、予兆を感じて指を緩めた。潤んだ目をしてハイファが叫ぶ。
「あ、ああっ……シド、出ちゃう……はうっ!」
「ハイファ……俺も……くっ――」
再びハイファはシドの手の中に熱く弾けさせた。同時にシドもハイファの芯に濃いものをたっぷりと溢れさせている。だが脱力するまもなくシドはハイファの躰をすくい上げていた。
「ああっ……シド、そんな……ああんっ!」
「ハイファ、こうするのは俺だけだ、誰にも……ハイファ!」
跪いたシドの上に跨らされ、ハイファは真下から貫かれていた。深く届いた熱い楔に縫い止められ、息もまともにつけない。その状態で激しく突き上げられて気が遠くなりかける。
「あっ、ふ……ああん、シド……太いよ……はぁんっ!」
あられもない声を絶え間なく洩らしていないと本当に意識が保てないほどの快感だった。シドは軽いハイファを持ち上げては落とし、下から揺すり上げては掻き回す。ハイファの充血した粘膜は一度いってなお太く硬いシドの形をくっきりと伝えていた。
「俺のハイファ……俺だけの――」
「んっ……貴方だけ、シドだけの僕だから……あうっ!」
「ハイファ、すまん……止められねぇよ!」
「いい、止めないで、もっと……激しくして!」
その言葉でシドはとうとう完全に理性をとばす。目茶苦茶にハイファを掻き混ぜてこね回しては揺すり上げて貫き始めた。とっくにハイファは上下感覚も失くしてシドにしがみつき、逞しい背に爪を立てて激しすぎる攻めに堪えるだけとなっている。
またも快感の大波が襲ってハイファはシドの腹にぱたぱたと白濁をぶつけた。同時にシドに中をずぶ濡れにされるのを感じる。
「ハイファ、もう俺、お前がいねぇと――」
「分かってる、シド……ああっ、はぁんっ!」
◇◇◇
何度いかされたかハイファはもう分からなくなっていた。
背後から貫かれ、また躰を開いてシドの激情を受け止める。あれから何時間が経つのか今もまだ太いシドが出入りを続け、ハイファはのしかかるようにしたシドの背に爪を立てていた。揺らされてシドがまた溢れさせるのを感じる。
飽くことなく我が身を欲するシドが酷く愛しい。夢中で抱き続けるシドの躰からは、匂い立つような男の色気が感じられた。掻き抱かれて耳許で囁かれる。
「怖かった……あいつらにお前が……怖かったんだ」
「そっか……あっん……はうんっ!」
「ハイファ、二度とあんな目には遭わせたくねぇんだ……ハイファ!」
こんなにストレートにシドが弱音を口にすることは珍しく、ハイファはまた愛しさでいっぱいになった。激情の全てを受け入れることでハイファはシドを独占する。
「でも、シド……あぅん……僕も貴方を護りたい」
「ハイファ、でも俺は――」
「一生、どんなものでも一緒に見ていくって誓った、から……」
涙で滲んだ視界に切れ長の黒い目が映った。少し怯えたような黒い瞳に頷いてみせる。怯えを撃ち破るように力強くハイファは微笑み、シドの動きに合わせて僅かに腰を蠢かせた。
「貴方は僕を護って。僕は貴方を護る。誓いを忘れないで」
ポーカーフェイスにハイファだけが分かる笑みが浮かんだ。諦めのようなその笑みが急にどう猛な色を帯びる。シドが腰の動きを限界まで速く激しくした。容赦のないそれにはもうハイファは追いつけない。心地のよい眩暈にハイファは身を任せた。
満身創痍のシドを見つめながら、いつまでも自分の中にこの男を閉じ込めておきたいという思いを抱きつつ、ハイファは完全に意識を快感に融かしていった――。
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