ドーナツ

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廣島さんとお昼休憩は少しずれたから一緒に食べなかったけど、数分だけ話せた。 気になっていたというイタリアンバルを教えてくれて、今すぐ予約していい?とスマホを見せてくれる。こういうあっさり、さっぱり、すっきり話の早い彼女とは気が合うのだ。 すかさず井原さんが 「絶対に一人で帰っちゃダメだよ。俺が迎えに行くから」 と廣島さんにも聞こえるように言う。 「井原さんの迎えの方が安心ですかね?」 「面白いこと聞くね、廣島さん。ロミオ、ヤバいんだって。来たあともメールあったし。まだそこんとこ、知らないだろ?ヤバいけど、笑いもついてくるよな…あそこまで脳ミソ浮遊感だされると」 アハッ…脳ミソ浮遊感…… 「……福居さんは、そこで可愛く笑えるところが井原カラーに侵食されてるわよね」 「え…面白くなかった?」 「まあまあ現実を言っただけかな、って」 「廣島さん…カッコいい」 「ちょーっ…っと、廣島さんがカッコいいの?どーいうこと?俺の間違いじゃないの?」 「間違いじゃないですよ、廣島さんはいつもカッコいいもの。あの研修最終日に最初に質問出来た時から、ずっとカッコいい」 「えっ、俺のライバル?廣島さん……手強い相手かも」 「付き合ってられない…井原さん、店の住所いります?」 「いる」 なんだかんだ言いながら、廣島さんが井原さんへイタリアンバルのページを送ると 「ありがと。じゃあ、今日は二人にデザートをあげよう。はい」 彼はコンビニのドーナツを私と廣島さんにくれた。
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