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「お疲れさまでした」
「部屋まで送るよ。あっ、ここまでが仕事モードだったってことか…そうかそうか」
改札を出てフムフムと間違った解釈をしている井原さんを無視して歩く。
「ここからはプライベートってことだね、和紗。遠慮なく“麻人”って呼んで。手、繋ぐ?」
「……いえ」
「今、一瞬考えたよね?遠慮しないで、ほれほれ」
“お手”のように大きな手のひらを前に持って来られたので、ぺしっ…と払っておく。無理やり触ったりはしてこないところが仕事などに影響ない秘訣か…いや…すーーっつ、なんかは手を繋ぐ方がマシだと思える行為かも?
「仕事のあとのこの時間に無駄に元気ですよね…って考えただけです」
「元気なんていつでもだよ。和紗の元気がないときも、福居さんの元気がないときも、いつでもどこでも注入してあげられる。聖女、福居和紗の隣で仕事をするなんていう、夢のような時間を過ごしてるのに疲れるはずないからね。注入方法もいろいろ…」
心からハッピーそうに話をする人が傍にいると、妬みや嫉みの感情を抱える人がいるらしいけれど、私は自分もハッピーな感じがする。
だからややこしい…この男があまりにもハッピーオーラを放出しているので、本来ドン引きするところをただ引くってだけに感じるのだ。
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