第1話 サプライズプレゼント

2/4
225人が本棚に入れています
本棚に追加
/158ページ
「あぁっ……き、気持ちいい、……会長……!」  会長の舌は魔法だ。あっという間に俺を蕩けさせ、体中どこもかしこもずぶずぶに濡らしてしまう。  口の中で蹂躙されるペニスは会長の激しい愛撫に芯を硬くさせて応え、先端から彼の望む体液を迸らせる。会長のデスクの上で大股を開くなんて、俺にしか許されないことだ。その非日常感がまた俺を高ぶらせ、体の奥が欲しくて疼くのに…… 「んっ、……あ、イきそう、です……会長っ!」 「──ん」 「ああぁっ……!」  疼くのに、一番欲しいところには会長は何もくれない。 「ご馳走様、玉雪。これで夜まで頑張れそうだ」 「……お、俺の方こそ……」  この一年、会長は一度たりとも俺を抱こうとしなかった。指一本俺の中に挿れようとしなかった。ペニスへの愛撫は互いにしているから、男の体に嫌悪感がある訳でも、不能という訳でもなさそうだけど……なぜか挿入だけはしないのだ。 「玉雪。明日はお前の部屋に泊まるから、夕飯に食べたい物を考えておいてくれ」 「……はい……」  抱かない理由をスパッと訊ければいいのに。何か怖い答えが返ってくるのではと思うと、なかなか言い出せない……変な所で小心者の俺。  俺より三十以上年上の三上会長だけれど、俺はこの人を世界で一番愛している。  十六歳で家出して半グレみたいな生き方をして、夜の渋谷で「青少年安全労働組合」とかいう嘘塗れの怪しい団体に拾われて、同じ家出少年・少女たちと一緒に社会のクソみたいな「仕事」をやらされて、十八になった途端に売春用の素材として売られた。  変態セレブが集まるパーティーで売り専ボーイとして出された俺を買い取ったのが、三上会長だった。たまたま取引先のお偉方から誘われてパーティーに参加したという会長は、『初物です。可愛がってね』というプレートを首から下げられた俺を見て、胸が締め付けられるようだったという。  全国各地と海外にも不動産会社を展開している「三上グループ」のトップである会長が、薄汚れてやさぐれていた俺を救ってくれたのだ。  そこから先はまるでシンデレラストーリー。  一生縁がないと思っていた広くて綺麗なマンションの部屋、ブランド物の服に高級食材を使った料理。欲しい物は何でも買ってもらえて、いや、何よりも──優しくされて、温かい言葉をかけられ、一人の人間として扱ってもらえた。  そんな会長に体に触れられるようになって、誰が拒むだろう。乱暴で変態的な手つきではなく、会長はいつだって俺が怖がらないように、優しく、そっと触れてくれた。  俺は子供だった。学校なんて中学すらロクに通えず喧嘩ばかりの日々で、会長と出会った頃は今時ヤンキーですら使わないような汚い言葉しか使えなかった。食事のマナーも最悪。殆ど野生児みたいだった俺に会長は根気よく接してくれて、一年かけてようやく人前で食事や会話ができるレベルになったのだ。  だから家出してから二年間、運よく守ってこられた貞操を会長に捧げたいと思うのは当然だ。会長は俺にとって最初で最後の相手。俺にとってこの世の男は会長だけだった。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!