猫とプラセボ効果

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猫とプラセボ効果

 猫のモモがソファの上で裏返って寝ている。  おなかが丸出しなので、撫でてみる。  すると起き上がってこっちをじっと見て、窓際へ行ってしまった。  猫のご機嫌は難しい。  猫と話ができたら、もっとうまく付き合えるだろうか?  もっとおなかを撫でさせてくれるだろうか?  でも猫はやっぱりしゃべらない。  猫が飛びつくおやつのTVCMをやっていた。  そういえばこれはまだ食べさせたことはない。  近所のスーパーでさっそく買ってくることにした。  買って帰ってくると、モモは玄関まで出迎えてくれた。  うれしくてつい頭を撫でたが、二~三度撫でたらふいとかわして行ってしまった。  追いかけるとモモは居間のソファの上にいた。  捕まえておなかをもにもにもんでみる。 「シャー!」  モモは怒って私を威嚇し、怯んだ私の手からにゅるりと抜け出してテーブルの下に入ってしまった。 「モモー、ごめんねー、出てきてー?」  だがテーブルの下にはモモのお尻しか見えない。  仕方ないのでさっそく新しいおやつを一本取り出して開けてみる。  モモが少し反応して、テーブルの下から顔を出し様子をうかがっている。  モモの鼻先におやつを突き出してみると、数舜匂いを嗅いで、舐めはじめた。  どうやらCMは本当みたいだ。  一心不乱に舐めているモモに、ふと思いついて話しかける。 「モモー。これはねぇ、お話ができるようになるお薬なんだよー?モモも私とお話ができるようになるかなー?」  だがモモは一心不乱におやつを食べるばかりで、私の話は全然聞いていないようだ。  一本分を食べ終えてもモモはなおも舐めようとする。  袋の中身はすっかり絞り出して、もう何も残っていない。 「モモー、もうなくなっちゃったよー?」  私はおやつの袋をモモから引き離し、ごみ箱に捨てようとした。  モモは私の足に両手をついて立ち上がって私を見上げている。 「もうおしまいねー」  すると、モモが言った。 「もうひとつ、ちょうだい」  さっき私が言ったことが効いたらしい。  プラセボ効果って、すごい。
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