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Ⅱ
司朗は子供の頃から甘い物が大好きだ。
「神威~、それ何食べてんだ?」
「お母さんが焼いてくれたケーキだよ」
「ふ~ん。良い匂いだな…おいしそう…」
「…一緒に食べる?」
「いいのか!?食べる!!」
母さん特製のキャロットケーキ
綺麗なオレンジ色のケーキが司朗の大好物だ
美味しそうに食べる司朗を見るのが、俺も好きだった。
司朗の甘い物好きは現在進行形で。
「なあ、神威。キャロットケーキが喰いたい」
「ん~、母さんに今度作ったのを送ってもらうか?」
「待てねぇよ。俺は今すぐ食べたいの!」
「んなムチャ言うなよ…」
「神威も作れるんだろ?作ってよ!」
仕方なしに準備を始める俺の背中に、ピッタリと張りついたまま後ろをついて来る司朗に “邪魔だ” と言いつつ微笑いを噛み殺す。
ケーキが焼きあがるのを待つ間の司朗も
口許にクリームをつけながら頬張る司朗も
子どもの頃から何ひとつ変わりはしない。
甘い香りがすると言って俺の指先に触れる司朗の手に、
子どもの頃同様にクリームをつけたままの司朗の口許に、
そっと唇を寄せる俺だけが大人になったんだろうか…?
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