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「じゃあ、それなりの理由を作ればいいんだな?」
ニヤニヤと気持ちが悪い笑みを浮かべた圭介を睨みつけると、俺から目を逸らして「優子」と、彼女の友人の名前を呼んだ。
当事者なら誰でも分かる友人の行動に、既に名前を呼んでしまっているという状況にも拘らず、俺は「おい!」と声を出す。そんな俺を見る為に、再びこちらに視線を戻した圭介は、人差し指を立てて、唇に当てながら下手くそなウィンクをした。
その顔が無性に腹が立ち、眉間にしわを寄せながら文句の一つでも言おうとしたが、優子が「なに?」と返事をしたせいで、俺は口を閉じざるを得なかった。
「今年の花火大会、誰と行く予定?」
「いつものように夏美と葉月だけど」
「やっぱりそうだよな」
腕を組んで、わざとらしく考え込む圭介。
そして、「じゃあさ」と口を開く。
「俺と昴と一緒に花火大会行かない?」
キュッと唇を結び、圭介を真っ直ぐ見据える。そんな俺の視線に気づいているというのに、圭介は一切俺の方を見ないで女子たちの方に顔を向けたまま。それがまた、俺を苛立たせる一つだというのに。
「私らは別にいいけど、そこの下敷き持ってるやつは行かないの?」
そう言って、優子が俺を指差す。
当然のように彼女も俺に視線を向けるから、自然と鼓動が速くなる。
「こいつは行かないよ」
「え、涼太くん行かないんだ?」
「そうなんだよ、夏美ちゃーん。高校最後の思い出を作りたいって言ってるのに、高校最後っていう言葉に魅力を感じないだとかカッコつけちゃってさ。薄情な奴じゃない? こうやって仲が良い女子たちも一緒に行くことになったのに。なぁ?」
こいつ、まじで卑怯。
明石が行くなら行くに決まってんだろ。
ていうか、明石の前で変なこと言うなよ。嫌われるだろうが。
「夏美ちゃんも言ってやってよ。俺たちだと何言ってもダメで」
「え、私?」
小声で「おい……!」と訴えたが、当然のように圭介の耳には届かなくて。更に眉間にしわが深くなる。
「俺の思い出作りの為にもお願い! 協力してくれないかな?」
本人の前で会話してたら意味ねえだろ、と。こんなの、俺が明石のことが好きって言っているようなもんじゃねえか、と心の中でツッコミを入れながら、ゆっくりと明石の方に視線を向ける。
まぁ、そっちに視線を向ければ目が合うのなんて当然だというのに、目が合っただけで俺の心臓は馬鹿みたいに跳ね上がり、暴れまわっていて、恥ずかしさから咄嗟に目を逸らしてしまう。
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