第3話 『母親を殺しなさい』

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第3話 『母親を殺しなさい』

僕と彩華が、56し屋になった次の日、RUIさんに呼び出された。 「話ってなんだろうね、冬華」 「さあ、初めての任務の話だったりして……」 「僕たちの初標的(ターゲット)は誰だろうね」 RUIさんに場所の地図を渡されていたから、何となくで僕と彩華は56し屋の事務所?へ向かった。 ドンッ! 僕らの目の前には、イメージとは違う綺麗で大きな会社の前にたどり着いた。 「ねぇ、彩華ここで合ってるよね……?」 「地図ではここって書いてるけど……」 僕は思った。 RUIさんが間違っているのか、僕らが間違っているのか……。 (どうしよう……) と困っていると、会社から誰かが出てくるのが見えた。 (人?……男の人だ……) すると、その男は僕らを見つけるなり、大きく手を振り、 「彩華くん!冬華くん!待ってたよ!」 声をかけてきた。 「俺は村田よろしくね」 ((誰だ?)) 2人揃ってそう思ったが、口には出さなかった。 「RUIから話は聞いてるよ。ようこそ、56し屋の事務所へ」 彼のその口振りから、僕はRUIさんの知り合いだと思った。 「あ、はい。どうも……」 「じゃあ、RUIさんの所に案内するね。着いてきて!」 僕らは彼に招かれ、案内された。 (この人は56し屋なのだろうか……) なんて疑問に思っていたことを言おうか迷った。 すると、 「あなたも56し屋なんですか?」 彩華が口を開いた。 (ナイス、彩華!) 僕らはただ質問の答えを待っていた。 待つこと1分……。 村田さんの口が開いた。 「君たちの言う通り、俺は56し屋だよ。10年前にRUIさんに助けて貰って56し屋になったんだ」 とそう答えた。 (村田さんも僕たちと同じだったんだ……) なんて思うと、赤の他人とは思えないほど親近感が何故か湧いた。 ガチャ! 「RUIさん連れてきました」 「ご苦労だった、村田。後は任務に行ってくれて構わない」 その時、僕は思った。 RUIさんの声がいつもより低かったことを……。 村田さんはRUIさんに一礼して、どこかへ行ってしまった。 「昨日ぶりだね。ようこそ56し屋の事務所へ」 「どうも……」 僕は今日から56し屋なのだと思うと怖くて固まってしまった。 「今日からよろしくお願いします、RUIさん」 その横で前向きな真剣な顔をした彩華が僕の目に写った。 「さっそくだが君たちに任務を依頼する」 僕はその言葉を聞いた時、頭が真っ白になった。 (今日、僕らは初めての標的(ターゲット)を殺すんだ……) 人を殺す事は初めてで、多分罪悪感もあって、でも人を助けたりすることが出来るのだと思った。 あの言葉を聞くまでは……。 「彩華、冬華、君たちの母親を殺しなさい」 「……え?」 (今なんて言ったんだ?お母さんを……こ、ころせって?) 耳を疑った。 まさかRUIさんの口からそんな言葉が出てくることは思わなかった。 僕は悟った。 RUIさんはこの事を僕らに話すのがどれだけ苦しくて辛い事なんだって知ってて、でも僕らが生きる為には言わないといけなかった。 (彩華と僕は2人で自らの母親を殺さないといけないのか……)
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