前章

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「祠に? 私、行こうか?」 「ふふ、これも運動だから。 (くり)ちゃんは疲れてるでしょう」 「ううん。じゃあ、一緒に行く!」 短い廊下を玄関へ出る。 和風家屋な横宮さん宅よりなお高い上がり(かまち)に腰かける間に、お祖母(ばあ)ちゃんは隣でさっとサンダルを突っかけた。  到着時の晴天も、穏やかに暮れて今は淡い茜色。 「前に私がお供えした時も、夕暮れだったね」 「そうだねぇ。久しぶりに栗ちゃんが来てくれて、 神様も喜んだだろうねぇ」 「久しぶり? 初めてじゃなかった?」 「うん。小さい頃も一緒に来たのよ…… もう大学生だなんて、早いねぇ」 「まだ高三だよ、私」 気の早い感慨に苦笑する。 まあ確かに、上手くいけば来年の今頃は大学生だ。 茜空に思い描いてみたけれど、 なんともぼんやりしていた。 進学先こそ決めたものの、 将来のほうはまだ曖昧なままらしい。 身近な友達が、お店を継ぐとか資格を取るとかいやにしっかりしてきたから、 確かな未来を描けない自分に時折迷いそうになる。 それはきっと私自身が解決することで、 だから口には出さなかった。 「そんなに長く続けてるんだね」 代わりに行く先の話題を一つ。 甘く煮られたお揚げを持って、 お祖母ちゃんはにっこり笑う。
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