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「最近、自分でもそう思うんだ。
ちょっと妙な感覚だけど、問題ない。
…気にしてくれたんでしょう?」
静かな感謝から逃げるように眉がしかめられ、
形の良い唇から次には威勢良く声があがる。
「あたしは暇なだけ!
気にしてるのはおじさんだから、そういうことは向こうに言いなさい」
「うん。彼にも言ったよ。無事に出張してた」
「は? なんでわかるの」
「昨夜のことだから」
驚きとともに振り向いた客人へ、
青年は庭の一角を視線で示して続ける。
「いつもの出張先を覗いたら、ちゃんといたよ。
…君は冷やかしに行かなかったの?」
「冷やかし? なんで?
それよりあんたそんな行動力あった?
昨日の今日で動くなんて」
意外だと返す声は、
一日とたたない発言を綺麗に忘れている。
が、彼は曖昧なため息を一つ挟むに留めた。
「揉めてるようなこと言うから、確かめたくて」
「どうして? …あ、待ってわかった」
訊いたそばから押しとどめて、
お隣さんの旅行先でしょう、と澄んだ声が正解の一つを紡ぎだした。
問われた側は隠さず頷き──更に。
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