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連想するまま言ったら当たってしまった。
思わず口をつぐむ私へ、
汐美さんは眉間にしわを寄せて補足にかかる。
「この近くにお供えが本当に消える祠があるらしい。君ならまた妙なことも知ってそうだと……いや、仕事だからな?
ぼく自身はそこまで信じてない」
どんな顔をしていたのか、
こちらを見るなり続く言葉が変わる。
当の私は古い噂の再登場に戸惑っただけだったのだけど、これにはえっと声をあげた。
にらまれたものの、仕方ないと思う。
初対面の場所と状況があれなのだ。
「本物がそう滅多にあるわけないだろう……
それで、来てくれるのか?
嫌なら別に構わないけど」
「あっいえ、行きます!」
置いていかれそうになって慌てて追いつく。
一瞬、小さな手紙の数々が頭に浮かんだけれど、先に足が動いていた。
「えっと……じゃあその、
今回も嘘だと思うんですか?」
駐車場を抜けて川沿いへ出ながらそっと訊いてみる。
「嘘というより、
単に動物か何かの仕業じゃないか」
返答は実に冷めていて、
そのくせ見上げてみた顔は、
それが真相だと信じていない面持ちだった。
嘘と勘違いの間に散らばる “本物” を、
なんとか探しだそうとしている、そんな顔。
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