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「……汐美さんが本物を探すのは、横宮さんを知るからですか?」
「……ぼくが本物を探してるのは決定事項なのか?」
何かすっとばした気がする問いには、
実に正確な指摘が入った。
ああそれだと苦笑する私に、
汐美さんは失礼にも珍妙なものを見る眼で告げる。
「あの人は……どちらかというと、過程だよ」
「…過程?」
つまり──探し始めたのが先?
先を待ってみても、後には二人分の靴音だけ。
前方にあの小さな鳥居が見える頃、
ようやく声が落ちてきた。
「……その。今、元気か。あの人」
ただの繋ぎのような問いかけと、
それにしては暗い声。
目を瞬いて、それでも私は知るままを答える。
「はい。勉強も見てくれます」
「勉強? あぁ大学受験だっけ、見えないな」
「一言余計ですっ、頑張ってるのに。
…まぁ、友達と違って将来まで見えてませんけど」
「別にいいんじゃないか?
その友達がしっかりしてるだけで」
「そうなんですけど、
その言い方だと私がしっかりしてないみたいです」
「そうだな、ぼくから見ると大分危なっかしい」
一転、人を小馬鹿にする笑みを浮かべて、
汐美さんが足を止める。
何かと思えば祠の前で、
思わずむっとしていた私も慌てて立ち止まった。
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