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☆
「──君に会うとなんでこうなるんだ?」
「それは完全にこっちの台詞だと思います」
唸り合ううち、ぽわ、と四方が明るくなった。
お盆の灯籠を思わせる照明が空間の四隅で光を放つ。
それで周囲を見ようとした私は、
「早くどいてくれ」
更に唸られて、まずは自分が乗るものに気づいた。
「わっ、すみません」
慌てて横に転がれば、
うつ伏せの人がおもむろに身を起こした。
埃一つない板張りの床に手をついて、
これ見よがしに腰をさする。
「今回は自分から飛びこんだんだろう。
ぼくのせいなのか?
こっちは君のおかげで無駄に痛かったんだけど」
「あ、じゃあ落ちる時庇ってくれたんですね。
ありがとうございます」
「………」
何やら喋る気力をなくした様子の背後には、
急傾斜の階段があった。
まさか何十段も転げ落ちてはいないだろうに、
見上げれば陽光はうんと小さい。
格子戸からもれ入ってくるものだろう。
何かを照らすには足りず、だから振り返った先の景色はすべて床照明に浮かんでいた。
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