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橙色にかろうじて雰囲気があるものの、
光り方はまるきり最新のそれだ。
設えもカーペットにローテーブルに、右隅には布団が二組、その脇では縦長の棚にすっぽりと布がかけられている。
生活感あふれる一方で不自然なほど小物がないから、ひょっとするとあそこにあれこれ詰めてあるのかもしれない。
布は正面にもあって、こちらは幾重にも垂らされたものが天井から床まで、空間を完全に仕切っていた。
「あの向こうが寝室とか……?
あれ、でも布団はこっち」
「じっくり見てる場合かっ」
ワンルームの装いに生活の知恵を見つけていると、
汐美さんにぐいと腕を掴まれた。
私を立たせた人はすぐさま階段へ踵を返す。
「え、いいんですか? 取材に来たんじゃ」
「取材対象は祠だ! どこだか知らないけど、
こんなだらしのない部屋じゃない…」
「そうですか? わりと必死に片付けた感じが…」
「だらしなくも必死に片付けた感じもなくってよ! 失礼な!」
ぱっと、実に凛とした声が響いて、
階段にかかる足が止まった。
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