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内心首を捻るものの、ごまかしの気配はない。
この “本物” ではだめなんだろうか。
わざわざ取材しにきたのに。
「じゃあ、こっちは……」
「文面通りです」
次の項目を指せば、
答えは別方向からやってきた。
向こうが見えない絶妙な角度で、
狐面さんが布の端を持ち上げている。
相も変わらぬ品の良さで、
副会長さんは不思議そうに私へ続けた。
「そもそも、なぜ栗ちゃんさんが驚いてますの?
とりもちなどやめるよう、
その者を横宮さんに近づけぬよう、
こちらは何度も止めましてよ」
「えっ…あっ、あの手紙そういう意味ですか?」
いや、そういうことなら主語を明記してほしかった。
この契約書といい、この方たちの文は行間にこめられるものが多すぎる…。
「同席は仕方ありませんが、口出しは無用。
これは横宮さんのお引越しにも関わる話です、
とにかくもお静かに」
「………」
──慌てた頭が、一瞬で覚めた。
実をいえば、私もこの場の自分が部外者に近いことくらい察していた。
何せ突きとばされても飛びこんだのだ。
ただあからさまな置き去りは嫌で、
質問してみただけだった。
けれど、多分。
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