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特に、今も窓から見下ろせる、
あの不思議な庭のことは。
「……でもこっちはわかんない」
とはいえ、二つめの文言には首を捻る。
何を何に近づけるなというのだろうか。
汐美さんを、横宮さんに?
いや、それはない。
なら、私?
「………」
眉を寄せて机を見る。机上には問題集やノートを入れたトートバッグが置かれていた。
つい先程まで、お隣に持ちこんでいた物だ。
受験で疎遠になるのは嫌で、
勉強道具を手に隣家には変わらず通っていた。
決して、横宮さんがお茶を淹れてくれるとか、
勉強を見てくれるとか、
息抜きで庭を散歩できるとか、
そういうことじゃない。
お隣付き合いが大事なだけだ。
散歩の際のお喋りには汐美さんの名も出るけれど、横宮さんが返事を硬くすることはもうない。
近況を伝えていいですかと尋ねた時も快く頷いたし、今日も今日とて、眼前の五連休の予定を話しても微笑むだけだった。
「僕の許可をとることないよ」と。
でも、確かにこっちへはうかがい忘れていたかもしれない。
──このゴールデンウィークに、
汐美さんと会うことについて。
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