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ベッドから手をのばして携帯を取る。
少し操作すれば、その人からは異色といえる返信が画面に表れた。
『その町ならぼくも仕事で訪ねる。
よければ会わないか』
返事はすでに送っていて、
実はそれは横宮さんに相談するより早かった。
この連休、私は祖母の家に行く。
いつもは夏に組む予定を、
今年は少し前倒しして春にした。
両親とは都合が合わずに一人旅だ。
のんびりしてきなさいと言ってくれた二人にも、
人と会うことは伝えてある。
横宮さんの友人と告げたらあっさり快諾してくれた家族に、お隣さんの意外な人徳を感じた。
だからもし、この文言が私への警告なら。
「……うーん、今更か」
約束しちゃったしと、
私は手紙を元通りに折り畳んだ。
捨てるのは忍びなく、
これまで同様机の引き出しに放りこむ。
あるいはこの連休中に、真意を確かめられるだろうか。
外の木々がさわりとそよぐ。
そういえば、お隣さんはどうすごすのだろう。
台所にあまり見ない良いティーセットが出ていたような、そんな朧げな記憶を浮かべながら、
私はもう少し頑張ろうと机に向かった。
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