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砂肝に舌鼓を打つ側がそこで眉を寄せた。
可能なら自分もしたのにと滲ませつつ、
問う声はやや真剣味を帯びる。
が、客人はもぐもぐしてからさっぱり答えた。
「ここは境界みたいなものだし。
怒るのはあの狐たちくらいでしょ」
「充分問題だよ……」
「細かくて付き合えないって。
あの副会長は少し面白いけれど。
もの知り顔で突き進むところとか笑っちゃう……
馬鹿にしてないよ? ただ一回、
目の前でおじさんと大バトルしてほしいだけ」
たしなめる視線を察知してもろくな帰着を見せない言に、横宮が小さくため息をもらす。
せめての望みは、
現状それが起こる可能性のないことか。
しかし、客人はそう思わないらしく。
「はあ、お茶も飲んだし、
おじさんとこ行こうかな。また冷やかしてやろ」
好き勝手移ろう興味に、
用済み宣言された家主が今度は緩く首を振る。
それは彼女が会いたがる少女の旅先でもあったけれど、そこには触れず口を開いた。
「今はいないよ。
毎年、この時期は行楽地に出張するって」
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