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女は俺の示す先を見つめていた。
「見た目は豪華なんですけどね、あそこで寂しく一人暮らし」俺は照れくさそうに言った。
やがて女は下を向いた。
男のことでつらい目にあったんだろ? 今夜は心の隙間を埋めようよ。俺が手伝うから。
うつむいた女の唇が湿った音を立てた。
「ね、そうしましょ。タクシーのほうが安全だし、楽だし」
女は何かを考えているようだったが、俺には十分な手応えがあった。今夜はすべてを吐き出す。この暑さも、苛立ちも、腹の奥で沸騰しているものも、もはや限界だ。
そして俺は最後の勝負に出た。
「どうせタクシー呼ぶなら、その前にうちで冷たいものでもどうです? この暑さ、ちょっと酷いから。ちょうど家に美味しいシャンパーニュが冷えてるんですよ」
父親からもらった高価な酒が手つかずのまま冷蔵庫に入っている。あの父親が高い酒だと言うのだから、かなりの代物だ。だが何の問題もない。この女にいくら投資したって構わない。
女は小さく頭を下げた。
「じゃあそうしましょう」
そう言って俺は女の膝に手を置いた。ここまできたら後は押すのみだ。多少強引だっていいさ。
そこに女が自分の手を重ねてきた。
マグマのように熱くなったものの一部が、間欠泉のごとく吹き出した。俺は女の肩に手を回し、襟元をなぞった。熱く濡れた肌が指に吸いつく。女は少し体を固くしたが嫌がる素振りはなかった。指先が曲線をなぞり下着に触れた。俺はもう隠す気もなかった。
俺は顔を近づけると、女のうなじに残る汗の雫を舐めた。
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