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竜宮キャノン
きれいな内装の大広間で、きらびやかな着物を身にまとった美しい女性が、腕を組みながら仁王立ちしている。
女性の隣には一匹の海亀。背後では、ホオジロザメとシャチが、尾ひれを足のようにして突っ立っている。
女性と海亀の前には、床の上に横たわり、眠るようにして目をつむっている一組の男女。男の方は茶髪でTシャツにジーパンという姿。女の方は金色に染めた髪にTシャツと短パンという姿。どちらも軽薄そうな印象を受ける。
「何なんですの? こやつら」
女性が腕組みに仁王立ちという姿勢を崩さず、いらついたような口調で、海亀に問いかけるようにして言った。
「二人の近くにいた魚達から話を聞いたのですが、北西の方にある山の中に川が流れておりまして、そこの中州でキャンプをしていたら、豪雨による鉄砲水で流され、その勢いでこの竜宮城付近まで来てしまったというカップルでございます。乙姫様」
流されてきたのは、この二人だけではなかった。川にいた魚達も一緒に流されてきたのだ。
海亀はその魚達から二人についての話を聞いた。
なお、無事だった魚達は現在、河口付近に留まっている。川の流れが落ち着いてから戻るつもりらしい。
「……」
「このまま死なせてしまうのも気が引けましたので、ここに連れてきました」
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