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「昨夜からの断続的な大雨により、駅前の道路が冠水しています!」
駅の近くで、レインコートに身を包んだ女性レポーターが、豪雨による被害状況を伝えるため、マイクを片手に実況中継している。
天気予報通りに接近してきた熱帯低気圧は、辺り一帯に豪雨をもたらした。キャンプ場も駅前も例外ではない。
カメラが、冠水した道路の様子を映す。茶色く濁った水が流れ、川のようになっている。マンホールがあると思われる所からは、水が噴き出し、噴水のようになっている。
「うわあああああ」
「きゃあああああ」
――何かしら?
人の叫び声が空から聞こえてきたような気がしたので、レポーターは空を見上げる。よくわからないが、小さな物体が見える。
よく見ると、物体は二つある。
二つの小さな物体は、やがて大きくなっていき、形がわかるくらいの大きさになった。
二つの物体は人間で、片方が男、もう片方が女だ。色は違うが、どちらも髪を染めていて、ラフな服装をしている。
二人はますます大きくなってくる。
「ひっ!」
こちらに向かって飛んでくる二人を見て、レポーターはのけぞる。
飛んできた二人は、レポーター近くの水面に着弾し、巨大な噴水のような水しぶきを上げる。
天高く舞い上がった無数の水しぶきは、やがて大きな風呂敷のようになって、レポーターに覆いかぶさった。
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