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「お!?やっぱりそれ気に入ったか。さすが俺が選んだだけあるな」
別の部屋にいたお父さんが笑顔で飛んで入って来た。
「最初に見つけたのは私ですけどぉ?」
「あぶぶ……?」
私の声に、両親揃って見詰めてくる。
この両親は嘘みたいに、本当に仲が良い。
今は少し慣れて来たけど、最初の頃は、まるでフィクション動画を見ているような気分で眺めていたっけ。
「ふふっ、可愛い」
「俺たちの子だからな」
「あなたったら」
そして、自分で言うのもなんだけど、両親は私の事が心底大好きなようだ。
つきっきりで私のお世話をするお母さん。休みの日は待ちに待ったかのように、私に絵本を読み聞かせてくれるお父さん。
私が前世で何度も使っていた『親ガチャ』なんて言葉を使うのも申し訳ないほどの存在だ。
こういう人達の事を『親の鏡』と言うんだろうな。
前世の両親は気に入らない事があるとすぐに暴力を振ったり、本当に散々だった。
高校も行かせてくれず、中学を卒業してからずっと働き詰め。
なのに帰宅した途端家事も全部押し付けられ、稼いだ給料は全部むしり取られていた。
少しでも反抗すると手を出されて、体にはいつもどこかしら痣があった。
私はずっと、何のために生きているのかも、よく分からないまま生きていた。
死にたくても死ぬ勇気もなくて、ダラダラと生きる苦しみ味わいながら生きていた。
でも今世は違う。
私を本当に愛してくれる人がいる。
そのことが本当に嬉しい。
でも、言葉に出来ないほどの幸福感を感じる分、大きくなったら復讐しに行くという事に酷い罪悪感を感じてしまう。
もし私の身に何かあったら、この両親を悲しませる事になってしまうだろうから。
本当に……中身が私なんかでごめんなさい。
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