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ふわりと浮いた感覚がすると、いつの間にか私はお母さんの腕の中にいた。
私の体は、ゆらゆらとゆりかごのように揺れる。
「大好きなシエルちゃん」
お母さんの腕の中はいつも心地よくて、なぜか絶対に眠くなる。そんな不思議な場所だ。
「シエルちゃんは長生きしてね」
そんな願いにも似た言葉に、目を閉じたばかりの瞼を気合いで持ち上げる。
すると予想していた通り、今にも泣きそうな目のお母さんが映った。
お母さんは時々、私に長生きを願っては悲しい顔をする。
普通、親は子供の長生きを願うものなんだろうけど……
「あぶ……」
とにかく、その下がった眉を見るだけで胸がズキリと痛んでしまう。
泣かないでほしい一心で、少し涙を浮かべたお母さんに小さすぎる手を伸ばす。
子供の本能なのかな。
小さい頃って、こんなんだったっけな……。全然覚えてないや。
とにかくお母さんの涙を見るのは、胸が張り裂けそうな程に辛い。
でも、ごめんなさい。
私、その願いを叶えれるか分からないです。
だって自由に動けるようになったら……命の危険があったとしても復讐しに行くって決めてるから。
それが、生まれ変わらせてもらった私の使命だろうから。
本当にごめんなさい。
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