小さな違和感と初めての愛情

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………… …… 「あわあわぁ~ジャー。気持ちいでしゅねぇ~」 お母さんの膝の上で頭を流し終わると、(くも)った鏡に自分の顔だけがぴょこんと映る。 前から思っていたけど、私、とんでもなく可愛いくない!? 目おっきいし、キラキラしてる! 黒髪黒目で、決して碧眼金髪ではないけど、これは美少女ならぬ美幼女(びようじょ)と呼ぶべき顔だわ。 「あーうー」 鏡に手を伸ばすと「自分の姿、気になりまちゅかぁ?」と目を糸みたいにして笑いかけてくる。 相変わらず両親は優しく、いつも笑顔だ。 毎日丁寧に洗濯された清潔で、とてもいい匂いの服を着せてくれる日々。 私が泣いても怒ったりしない。 すっごく幸せ。 復讐なんてしないで、このままずっと両親の近くにいたいって、思ってしまう事は少なくは無い。 こんな素敵なお家に生まれ変わるんだったら、前世の記憶なんて無かったらよかった。 そしたら、こんなに苦しくなる事もなく、ただ幸せに生きれたのに。 でも……、 前世の記憶があるから復讐できるんだ。 まだ調べれないから分からないけど、もしまだ奴が法に罰せられずにいるのなら……罰せれるのは私だけかもしれないんだ! 私を殺しておきながら、なんの罰もなくて過ごされているのだけは絶対に許せないし、許すつもりは無い! 「どうして怒ってるの?泡が目に入っちゃったのかな?」 そう言って()れたガーゼで目元をそっと()いてくるお母さんに泣きそうになって、ぐっと涙をこらえた。 早く成長したいけど、やっぱり待ってほしい。 そんな葛藤の日々を過ごしていた時、この家のに気付いてしまった。
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