小さな違和感と初めての愛情

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そのおかしな点というのは―― 家にスマホや電話、テレビなど、外から入る情報が一切無い事。 そして私が家から一歩も出させてもらえない事だ。 もちろん話せるようになってからは、外に出たいと何度か言った。でも、適当に(にご)されてしまうだけで叶わなかった。 そして最後は、もうおかしな点というよりも『異様性』と言った方がいいと思う。 それは―― この家の窓から、外が一切見えないということだ。 部屋に窓はあるけど、ほとんど外の明かりが入らず昼でも薄暗い。 窓を開けた先は別の建物の壁か、謎の黒い板が貼られて使っていない窓だけ。 この状況は、私だけを外の世界からあえて遮断(しゃだん)しているとしか思えない。 そう言えば検診とか予防接種とかも受けた事もない。 お母さんやお父さんの事を悪く思いたくないけど、これは監禁とか軟禁に入るんじゃないかという思いが頭を(よぎ)る。 でも、きっとそんなのは全部気のせいに決まってる! だって、今世の両親は本当に優しいし、私を本当に愛してくれているんだから! だからきっと幼稚園に行く年になれば、そんな不安を感じた事もあったな、って笑い話になるんだろうと信じてる。 そう思いながら薄暗い部屋で月日を重ね、ついに私は、外の世界を一度も見る事もなく、4の誕生日を迎えてしまった。
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