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「もしかして、好きなプレゼントじゃ無かったかい?」
その言葉にぶんぶんと首を振る。
「ううん。とっても可愛くて嬉しいよ……」
「じゃあ、ケーキが好きじゃなかったのかい?シエルが大好きな苺がいっぱい乗ったケーキにしたんだよ」
その言葉にも首を振る。
「そんなんじゃないの……私……」
しばらく待ってくれていたのに、なかなか言い出せない私に、両親の心配そうな顔が向く。
「ゆっくりで良いのよ。何があったのか教えてくれる?こんな素敵な日にそんな顔してたら、ママもパパもすごく心配だから」
そんな優しい声と、肩に置かれた暖かなお母さんの手に後押しされた気がした。
私は、膝の上にある小さな手をギュッと握って、決心を固めた。
「私……私……」
「うん」
両親からの穏やかな声が落ちてくると、力を入れていた手に、両親の温かな手が添えられ、勇気が沸いた。
「私……いつまでこの部屋だけなの?」
私の言葉を聞いた両親は、笑顔がスッと消えて見た事の無い顔のまま固まった。
明らかに曇った両親の顔に、心臓が嫌な音を立てた。
こんな両親の顔を初めて見た。
きっと、このまま続けちゃ駄目なんだろう。
そう思って身を引こうとした自分を、力の限り押しのける。
前世の両親の記憶が残ってるせいで、親に歯向かったり、機嫌を損ねそうな事はまだ怖くて上手く出来ない。
でも、今ここで頑張らないと、こんな顔をした両親を思い出して、きっと一生聞けない気がする。
そんな思いを胸に、もう一度口を開けた。
「私も、パパやママみたいに、お外に出てみたい!私だけ出れないのなんておかしいと思う!」
ふり絞るように言った私の言葉に、両親は眉を寄せて顔を見合わした。
すると、お父さんが予想外の事を口にした。
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