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「あぶあぶ!!」
歩く事さえ出来ない私は、手にしていた歯固めのオモチャを噛んでから怒りのままにブンブンと振り回す。
まあ、今いくら考えても寝返りも出来ない赤ちゃんの姿じゃ何も出来ないけど。どちらにしても、もう少し先の話だ。
「ふふっ、シエルちゃんは力持ちでちゅねぇ。そのオモチャ気に入ったのかな?」
私の隣でずっと幸せそうな顔で見つめていたお母さんが、私の頭に手を伸ばしてくるから、体をこわばらせてギュッと目をつむってしまう。
でも、すぐに頭をふわりと包まれる感覚が伝わって、ゆっくりと目を開ける。
優しく撫でられてると分かって、固くなった筋肉が少しずつ緩んでいく。
目の前には優しく愛情を感じる目。
その目に、じわりと胸の奥が温かくなってくる。
お母さんの手はとっても温かくて、心地よくて、撫でられるだけで幸せを感じてしまう。
なのに、前世の親に手を挙げらていた記憶のせいで、頭に手を伸ばされる瞬間だけは今でも苦手で慣れない。
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