プロローグ

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プロローグ

私は、名前も、顔も知らない人に殺された。 死んだ世界はとても暗く……何もない。 あの日、あの道を通らなければ、とか 二本も早い電車に乗らなければ、とか 結婚式代をケチって大安にしなかったからだ、とか…… 今更(いまさら)いくら考えても仕方のない事を何度も何度も頭の中をループし、(ひど)く自分を責め、後悔し続けた。 そんな時、私は生まれ変わった。 その瞬間、神様が私に復讐(ふくしゅう)の機会を与えて下さったんだと思った。 でも――今なら分かる。 それはきっと、違うって。 神様は私に、愛される喜びを与えて下さったんじゃないかって、今なら思うの。 「シエル」 私を呼ぶ野太い声に振り返ると、思わず笑みが(こぼ)れた。
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