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その声を聞いて、ヒヤっとした汗が全身に噴き出るのを感じた。
静まり返った部屋の中で、心臓の鼓動がやけに大きく響いているのが自分でもはっきりと分かった。
どう反応していいのかも分からない私は、ディオンが私の名前を再度呼んだのに、振り返る事も出来ずに固まった。
コツコツと足音が近付いてくる。
「どうした?」
覗き込まれて、ドアップに映ったディオンの顔に、動揺し過ぎて床に尻もちをついて勢いよく後ずさる。
そんな私の行動に、目を丸くしたディオンはすっと眉をひそめた。
そして、足音を立てて私の目の前に来ると、酷く低い声で聞いて来た。
「何があったか?」
私は、息の仕方を忘れて酷く呼吸が乱れた。
「はぁ……はぁ……」
息苦しさで目の前が歪む。
こ、怖い……
ディオンから、早く逃げないと。
じゃなきゃ…………殺されるっ!!
ディオンは震える私の耳元に顔を近づけると、静かに囁いた。
「まさか……思い出した?」
私は、その言葉に動揺を隠す事も出来ずに、目を大きくしてしまった。
「……っ!!」
そんな私の様子を見たディオンは、無表情のまま、手に鋭く光る何かを出してくる。
「やっぱ、あれがないと駄目そうだな……」
そう呟くと、ディオンはその光る物をゆっくりと私の顔に近づけてきた。
冷たい汗が背筋を伝い、心臓が跳ね上がる。
逃げなきゃ……
何度もそう思うのに、体は思うように動かない。
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