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鬼薔薇は、ビクターの肩を抱くとぎゅっと抱きしめる。みちみちした筋肉に包まれるのは、思ったよりも嫌ではなかった。
髪を解かれて、頭皮に指を這わされるのは心地がいい。
服を脱がされて、うっとりと胸に愛撫を受けて、ようやくビクターは自分が組み敷かれたままだということに気が付いた。
「――ちょっと、もしかして君が僕を抱くのかい?」
「ええ、そうですよ。どうにでもなれって、ロズル様の顔に書いてありますもの」
ビクターは断ろうとして、直前で考えを変えた。今日は誰かに尽くしてやりたい気分ではない。
「では、君に任せてみようかな」
「ええ、全部お任せくださいな」
鬼薔薇は宣言通り丁寧にビクターを愛撫する。
鬼薔薇の口淫の上手さには舌を巻く。
何も考えずに受け入れるだけでいい状況が、ビクターに癒しを与えた。見栄も何も投げ出して喘ぐのは気持ちがいい。
「いい塩梅ですよぉ。ロズル様、力の抜き方が上手です。すぐに悦くなれますからね」
鬼薔薇はうつ伏せにしたビクターの目の前で、長い爪を切り始めた。
色のついた爪が、三日月形に切り取られて落ちる。
綺麗に手入れして伸ばしていただろうに、もったいないなと、切り落とされた爪の残骸を見ながら呆けているうちに、ぬるりとした感触で臀部が濡れた。
「……な」
「あら、ここは初めてですか?」
潤滑油をまとった指が、ビクターの尻を行き来する。ビクターは男も抱くが、自分がされたことはない。
「……そこは、使ったことがない……な」
かすれる声で告げると、鬼薔薇はビクターの足を押さえつけ、慎ましやかに窄んだ場所にふっと息をかける。
「あたしに任せると、おっしゃったじゃありませんか」
「そこで快感を得られるとは思えないんだ」
「では、試してみましょうよ。不快になったらやめて差し上げますから、遠慮なくおっしゃってくださいね」
「い、いや……ま、待ってくれ……あの、あ、ああ!」
鬼薔薇は、独特の高圧的な態度で硬く閉じた場所を指で押し、ビクターの反応を見る。
「不快ではなさそうですね。さあ、もう一度」
今度は、きつく閉じた筋肉の輪の皺を伸ばすように両手で広げられて、潤滑油を足される。
自分の体から発せられているとは思えない雌の音に耳を犯され、眩暈がするほどだ。
次から次へと鬼薔薇の肛虐は続き、ついに指先が孔の内部まで差し入れられて、ぞわりと、危険を告げる鳥肌がたつ。
「ひ……あ……」
それなのに、ビクターはまだ中止してくれと言えずにいる。
「快感が無いのなら、終わりに致しますからね」
「う……」
ビクターは快感に素直だった。苦しくて悲しくて疼くようなその先に、不思議と官能の気配がする。ビクターは再度、中止の言葉を飲みこんだ。
「まぁ、いいこですね。ちゃんと何が欲しいのか、よくわかっていらっしゃる」
「――ん、ふっ……」
綺麗に整えられた指先が、ビクターの穴の縁を丸くなぞり、ちゃぷちゃぷと浅く出入りする。
鬼薔薇は時間をかけてビクターの排泄の場所を性感帯に変えていった。節まで沈めば、ビクターは声のない嬌声をあげる。
「あたしも普段はこんなこと、しないのですけれどね。今さっき、ビクター様の顔を見たら、たまらなくなって。あたしのこっちは、飾りみたいなものなのですけれど、ロズル様に喜んでいただけるのなら、たまには使ってみるのも一興かしらと――」
ビクターは油断していた。知らない快感に身を任せて、喘ぐのは良い発散になったが、この行為に続きがあることまでは想像していなかったのだ。
「――その前に、中の準備もしちゃいましょうかね……」
鬼薔薇は懐から何かを取り出す。
快感に目覚めて、少し撓んできたビクターの窄まりに、摘み上げた小石のような物を咥えさせると、一番長い指で、奥の奥まで届けた。ビクターは異物感で脂汗がとまらない。
「ぐ……ああっ……これは……?」
「お腹は痛くなりますけど、一度で腹の中を綺麗にしてくれる魔法石ですよ。ご存じないですか? ロズル様、まだまだ、我慢ですよ」
石が入った場所で質量が増して、腸内で何かが起きているのがわかる。
「……い、痛い……こんなの、聞いていない……」
予想していなかった腹痛に冷や汗が出て、足が震える。
「ええ、でも、ロズル様、こうされたくて、ここに来たのでしょう?」
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