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次の朝――
『おきて。おなかすいた』肉球で顔をつんつんされ目覚める私。枕元の時計はもう8時を過ぎていました。
リンに朝御飯をあげて、トースターをセットして、ポットにお湯を注いで・・・私はテレビのスイッチを入れました。ちょうど朝のニュースがやっているところです。
『・・・きのう深夜2時頃に関東地方で目撃された火球は、 上空で爆発後、 いくつかの破片がX県Z市に落下したということです』
「へ~え、あたしの住んでいる街だわ」
もぐもぐ・・・。食べながら他人事のような気持で見ている私。
続いて画面が、スタジオから現場へと切り替わりました。
『ここが通報のあったアパート駐車場です!見てください!落下したとみられる隕石が、アスファルトに、めり込んでしまっています!』
「え?え?ここって、 私の今いるアパートじゃない・・・?」
カメラが少しずつチルトアップして今度は、無残にへし折れぶら下がっている、赤い車のドアミラーを映し出しました。
『見てください、この軽自動車!右側のドアミラーが壊れてしまっています!』
「いやあああ⁉あたしのアルトがああああ⁉」
あわてて玄関から飛び出しました。ドアを開けた瞬間、目に入ったものは、愛車の側に立つレポーターの後ろ姿と、数人のテレビスタッフとカメラマン・・・。
『あっ、車の持ち主の方ですか?今のお気持ちをお聞かせください!』
ようやく全てを理解しました。ゆうべの閃光と爆発音は火球、直後の落下音は隕石によるものだったのですね。
それにしても危なかった・・・。もしもあの時、外に出て車に乗ろうとしていたら、隕石が直撃したのはアスファルトではなく、私だったかもしれません。
昔から猫には超自然的な、不思議な感覚があると言われています。リンはあの時、事前に危険を察知して、私を助けてくれたのでしょうか?
顔の高さに抱き上げると、琥珀のような瞳でジッと見つめ返してきます。 そんなリンに問いかけてみました。
「リン・・・、あたしを助けてくれたの?」
「ニャ~ン!」
今、『飼い主に死なれたらこまる!』と言ったようです。はい、何となく解るのです。だってもう何年も一緒にいますから。
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