二章:お母さんとねむち

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 ぼくの方はというと、あいかわらず人の顔を覚えられずにいた。治る気配は全然なし。それどころか、三年生に上がったとたん、夜中に一人でトイレに行けなくなってしまったのだ。名誉のために言っておくけれど、決してオバケや妖怪が怖かったわけじゃない。まっくらな闇が苦手だったのだ。 「暗闇から誰かがじっと見てる」 「それをオバケっていうのよ」  からかうようにお姉ちゃんは言うけれど、じっと見てるだけで何もしないオバケなんているもんか。いないに決まってる。いないはず……たぶん。  トイレに行けないということは、当然アレをしてしまう。そう、おねしょだ。夕ご飯のジュースをがまんしてもみたけれど、二日に一回はフトンを濡らしてしまった。名誉のために言っておくけれど、けっして寝ているときにしてしまうんじゃない。トイレに行きたくて目が覚めるけれど、フトンから出られずにしてしまうのだ。そこのところは、ぜんぜん違うのだ。
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