名もなきヒーラー

3/5
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
*  夜の町を歩きながら、自分の住む寮へ歩いているときだった。  目の前を五歳ぐらいの女の子が走ってきた。夜道を危ないなぁと思っていたら、案の定、石畳につま先を引っかけた。 「危ない!」  と思ったときには遅く、女の子は派手に転んだ。大きな声でその子は泣きはじめた。私は駆け寄り膝をつく。 「大丈夫?」  声をかけながら怪我をしていないか見てみると、膝や肘を擦りむいてしまったらしく血が滲んでいた。 「大丈夫、これぐらい私の魔法で」  そう言って呪文を唱えてみたけれど、指先は何の光も示すことはなかった。  しまった。  今日一日で魔法力を使いすぎたんだ。この傷を治す魔法力が残っていない。  回復効果のあるおくすりも全部使ってしまっていた。  どうしよう、泣いているこの子をどうしよう?   こんな小さな子にも私は何もできないの?  そんなときだった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!