名もなきヒーラー

1/5
前へ
/5ページ
次へ
 魔物が溢れるこの世界を私が救う、魔王だって倒してみせる、そう小さな頃から冒険者を夢見ていた。  冒険者養成スクールに入り、私は数々の古代魔法などの攻撃魔法を使いこなす大魔法使いを夢見ていたが、適正検査の結果は「ヒーラー」だった。回復魔法や補助魔法を中心とした白魔法を使うジョブだった。  この適正結果に基づいてジョブに沿った訓練がスクールでは始まる。例外はない。  派手さのないジョブでがっくりした。  もちろん、ヒーラーだって、もちろん冒険の中で大切なジョブだ。でも今一つ目立たなくて、好きなジョブではなれない。 「私は、派手な攻撃魔法を使う魔法使いになりたかったんです」  そう言ってみても先生たちは「貴方はこっちが向いているから」と白魔法の教本しかくれなかった。  養成スクールを卒業して、いくつかの冒険者ギルドに登録したけれど、私に声をかけてくれるパーティーは一つもなかった。  それもそのはずで、私が習得したのは、卒業要件ぎりぎりである初級の回復魔法や補助魔法だ。このレベルでは軽傷しか癒せないし、重度の負傷の場合は相当な時間をかけないと治すことができない。  初級の魔法しか使えず、剣や槍を奮う腕力もなく、体力も女性として平均的なレベルを超えていない。こんな私を必要なパーティーはなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加