名もなきヒーラー

4/5
前へ
/5ページ
次へ
* 「あらミレーどうしたの? 転んじゃったの?」  後ろから声がしたと思うと女性が私の横にしゃがみこんだ。 「すいません、この子ったらそそっかしくて。私を迎えに来てくれたんでしょうけど」  泣いている女の子を彼女に抱きついた。おそらくは母親だろう。 「こんな怪我大丈夫よ、痛いの痛いの飛んでいけー」  それは魔法じゃないし、傷を治すことはない言葉のはずだった。  でも、この子にとっては、それが何よりの「おくすり」だった。  泣いていたその子の顔が綻び、「ママァ」と優しい笑顔が戻った。 「すごいですね……」  思わず口から出た言葉に母親は微笑んだ。 「全然すごくないですよ」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加