第1章

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 担任に渡されたメモを見ながら彼女の家へ向かう。  思ったよりも担任のメモは分かりやすく、あっさり家にたどり着いた。  インターホンを押す。  すると、男の人の声が聞こえた。 「はい。どちら様ですか?」 「あ、(みどり)高校の松樹優輝と申します。担任の先生に言われて琴葉さんに手紙を届けに来ました」  そう言うと玄関のドアがすんなり開いた。 「ありがとうね。君が松樹くんか」  口ぶりからして僕の事を知っているように感じた。 「はい。こちら琴葉さんの手紙です」  そう言ってファイルを手渡す。  すると、男の人が続けた。 「遠かっただろ。良かったら上がっていきなさい」 「いえいえ。そんなに遠くもありませんでしたし大丈夫ですよ」  「お茶でもどうかね?松樹くんの話は琴葉からよく聞いていてね、1度会ってみたかったんだよ」  そう言われ部屋の中へ案内される。 「お茶しかないけれど、どうぞ」 「ありがとうございます」  すると、階段を誰かが降りてくる音が聞こえる。 「誰か来ているの?」  女の人の声。  振り返ると同時に男の人が答えた。 「ああ、恵美(めぐみ)。この子が琴葉がよく言っていた松樹くんだよ」 「あら!」 「どうも松樹優輝です」  挨拶を返す。  すると、女の人が男の人の横に座った。 「はじめまして。琴葉の母の恵美です。こちらが琴葉の父の亮介(りょうすけ)です」  恵美さんがそう言うと今度は亮介さんが続けた。 「すまないね。今琴葉は家に居ないんだよ」 「と言いますと……」  言っておいて後悔した。聞かない方が良かったかもしれない。  恵美さんと亮介さんは顔を見合わせて、亮介さんが続けた。 「そうか……琴葉は松樹くんにも言っていなかったんだね。琴葉は、病気なんだよ」 「そう……だったんですか……」  やっぱり、聞かなければ良かったのかもしれない。  そう思いながらも亮介さんは続けた。 「病気と言ってもね、琴葉は心臓が悪いんだよ」 「心臓が……」 「それも、もうあまり良くない。本当は1秒でも早く移植手術を受けて欲しいんだ。だけど……ドナーが見つからなくてね……」  簡単に聞いていいことでは無かった。 「医者からは、余命半年と言われているんだ」  言葉が出ない。  何を言っていいのか。  分からない。  すると、恵美さんが続けた。 「松樹くん、琴葉と仲がいいのよね……もし、良ければ琴葉に会ってあげてくれないかしら」 「仲がいいと言っていいんでしょうか。僕は席が隣ってだけで友達とも言えるか分かりません……」 「でも、学校でよく話してくれるのでしょう?」
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