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確かに学校ではよく話している。
「よく話はします」
「なら、琴葉は十分友達だと思っているんじゃないかしら」
「そうだと……いいんですが……」
少しの沈黙。
その沈黙を亮介さんが破る。
「別に今日とは言わないし、強制もしない。だけど、もし琴葉に会ってくれるならこの番号に連絡が欲しい」
そう言って、折り畳んだメモを渡される。
「分かりました。今日は失礼します」
「今日はありがとうね。気をつけて帰ってね」
「はい。ありがとうございます」
そう言って彼女の家を後にする。
胸に手を当てて考える。
心臓が悪い。
移植手術を受けるべき所に彼女はいるのか。
そんなことを考えながら、家の直ぐそばにいるコンビニの前を通る。
通りさろうとしたとき名前を呼ばた。
「優輝!」
振り向くとコンビニの自動ドアの前から呼ばれていた。
「姉ちゃん……」
呟くと姉は走って僕の方へ来た。
「優輝、こんな時間に帰ってるの珍しいね」
「まぁね、てかあんな遠くから人の名前叫ばないでよ」
「あはは。ごめんごめん」
絶対悪いと思っていない。
「けど、優輝がまだ家に帰ってないの本当に珍しいね」
「担任に頼まれて手紙届けに行ってた」
「無理……しないでね」
「わかってるよ」
少し投げやりな返事をしてしまったかもしれないと思った。
姉と2人で帰るなんて珍しすぎることだ。
家にたどり着くと窓から灯りが漏れていた。
「お母さんかお父さん帰ってきてるのかな」
隣でそう言う姉。
確かにこの時間に家に誰かいることは珍しい。
玄関の扉に手を掛け引く。
ガチャと音を立てて扉が開く。
「ただいま」
「ただいまー」
僕と姉がそう言うと奥から人が歩いてくる。
「おかえり!」
そう言ってリビングから出てきたのは母だった。
「あら、優輝と優夏が一緒に帰ってくるなんて珍しいわね」
「そこのコンビニであったんだよ」
僕がそう答えると母は「あら、そうなのね」と感心するかのような返答をした。
「お母さん帰ってくるの早いね、今日」
姉がそう答えると母が答える。
「そりゃそうよ!お父さんもすぐ帰ってくるわよ」
なんかあったけ、今日……。
特に何も無いような気がする。
そんなことを考えながら部屋に戻り荷物を降ろす。
制服のポケットの中にある折り畳んだメモが手に触れる。
取り出して中を開く。
そこには番号が書かれている。
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