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朝読書が始まるギリギリの時間に、岡は教室にかけこむ。運動部恒例の朝練。この一週間、毎日バタバタで今日もあわただしく席についた。
と同時に「おはよ」
私に言ったとは思わなかったので、本から目を離さなかった。
「なんだよ、無視すんなよ」
指先で私の机をノックする。
「え、あ、私?」
「川崎って本よく読むよな。なんか面白いの教えてくれよ」
うわ。岡から話かけてきた。顔が赤くなってないことを祈りながら、できるだけさりげなく。
「どんな本読みたいの」
ちょっと声が上ずった。
「サクッと読めるのがいいな」
よかった。ここで恋愛ものと言われたら、私は悶絶しただろう。
じゃあってことでショートショートの大家の名前を告げたところ、律義にノートのはしに書き留めていた。
この日から、私は岡としゃべるようになったのだ。やったー。
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