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一方、輝が音頭を取って始まった私への仕打ちは、一週間を待たずにクラスの女子に浸透した。
無視、外し、シカト、ハブ。
独りぼっちが地獄な女子に突然仕掛ければ、たいそう効くだろう。でも、私は覚悟していたし、やりすごす術をもう身につけている。
お昼を一人で食べ、トイレも一人でいく。グループを作る時は余った者同士でその場限りの関係を築く。
輝の悪口にも、それを笑う取りまきの声にも、ポーカーフェイスを貫きノーダメージを装う。
心のシャッターを降ろせばいいだけ。
それに、完全無欠、完璧なる孤立かといえばそうでもない。数研にいけば口をきくし、先生とも会話する。なによりうれしいのは岡だ。
私が女子から外されているのはわかっているはずなのに、ごく普通に、マイペースで話かけてくる。
「家の帰り道に懐かない猫がいるんだ」
「のら猫?」
「たぶんね。ミーって勝手に呼んでる」
「ありきたりな名前だね」
「まあな。ミーって鳴いてよってくるんだよ」
「それって懐いてるよね」
「そうかな。途中でとまって座っちゃうんだぜ」
「岡をじっと見てるの?」
「うん」
「やっぱり岡のこと、好きなんじゃないの」
じっと見るってことは、そういうことなんだよ。
「それにしちゃ無愛想なんだ。なでさせてくれればいいのにな。心の距離を感じるよ」
「大ゲサだね。岡はミーのこと、気に入ってるんだ」
「ああ、好きだよ。じゃなきゃ部活で疲れてんのに相手しないって」
私はミーになりたい。
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