ジャリナゲ

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 (キラリ)がまた突っかかってくると面倒だ。授業が終わると直ちに数研の部室にこもった。今日は先生がいないので一時間ほどで解散。さて、このあとは陸上だ。家に帰って準備しよう。  岡、大丈夫かな。私になにができるわけでもないのに、岡の姿をさがしてしまう。  視線は運動場をさまようばかりだった。他の三年生はいる。岡だけがいない。  もやもやを抱えて正門を出ると、ユニフォーム姿の岡と鉢合わせになった。目に力がない。 「あれ、練習どうしたの」 「俺、投げるのやめた。引退までランニングに専念する」 「ランニング? ピッチャーやめたなら、三塁とか外野になればいいんじゃないの」 「松尾がダメだって。一度やり始めたからには、途中でポジション変えるなって」  そんなバカなことがあるか。  沢コーチの顔が浮かんだのと、岡の手首をつかむのが同時だった。  競技場だ。競技場にいこう。 「いっしょにきて」 「どこへ?」 「本当の私がいるとこ」 「なんだよそれ」 「いいから」  言い捨てて走った。重かった腕が軽くなったのは、岡も走り出したから。私は指をほどき、スカートがまくれるのも気にしないで地面を蹴った。  まだ時間じゃないけど、沢コーチはきっといる。  一人で芝生に立つコーチの姿が鮮明に浮かんだ。まわりには誰もいない。トラックを走るのは風だけだ。  そう、そのほうがいい。人目を気にしないで思い切り投げられる。
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