No.0,プロローグ

1/1
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

No.0,プロローグ

変な夢を見たんだ。 僕が着物を着ている美青年と共に死者の願いを叶えると言う夢を。着物を着ている美青年は、僕を様付けして、僕に手を差し伸べるのであった。 目が覚める。今何時だ? とスマホを見ると夜だった。近くにあったシガレットケースとライターを持って、肌寒いと感じるベランダへ行く。 シガレットケースから煙草を取り、ライターで火を付けて吸う。 ふぅ、と吸った煙をはくと真っ暗な空と同化していく。煙草は苦く、不健康な味がした。 * 生きていると実感出来る夢を見ました。 茶髪で煙草を吸っている青年と一緒に何かしている夢を。 何をしていたかはハッキリと覚えていないのですが、何故か幸せと言う物を実感しました。 いつか、こんな人と出会って幸せと言う物を実感したいな。そう思いました。 私は床に落ちている原稿用紙を見つめました。綴られた文章の上に✕と大きく書かれている原稿用紙を。 私はそれを見て涙が出そうになりました。 あぁ、小説が書けない。生きている実感がしませんでした。 * 幸せな夢を見た。 眼鏡をかけている変態な人に溺愛される夢を。ボクは何故か天使の輪と羽を付けていて、変態な人は白衣を着ていた。何この夢。変だが、何処か幸せな夢。 ボクは目を擦って薄暗い部屋でランタンを付けて、机に体を向けた。今見た夢が現実で、現実が夢だったら良いのに。ノートに敷き詰められた文字。重ねて積み上げられている難しい本。 ボクは積み上げられている本を足で倒した。 * 死んでも良いくらい幸せな夢を見た。 可愛くて可愛くて可愛くて仕方がない少年と一緒に過ごす夢を見た。 相手は俺を変態扱いするけれど、俺が誰かと話しているとむすっとして、俺がいなくなったら困惑する。俺がいないと駄目なのに、だけどそれを否定しているツンデレな少年。 だが、少年は普通の人とは違い天使の輪と羽を付けていた。こんなに可愛いんだし、天使なのかも。そんな事を思いながら、机に置いてある眼鏡を見つめた。俺は眼鏡をかけた。 そしてアイツと一緒に勉強した時に使用していた、ノートを捨てた。 * クソ見たいな夢を見た。 誰かと出会い付き合って性行為して何故か子供が出来て、失踪して、そして✕✕になっていると言うクソ見たいな――いや、クソな夢を。 思わず吐き気がして、口元を手で抑えた。机に置かれている小さな瓶。瓶には薬が入っていた。 俺はそれを一気に口に入れて噛んで、水を含んで飲み干した。心臓が痛い。頭が痛い。 床に落ちている資料を見た。それを見るだけで涙が出てくる。 あぁ、もう、本当。こんな世の中消えちゃえば良いのに。 * 吐き気がするほど酷い夢を見た。 自分が未成年と性行為して捨てると言う日残な夢を。 何故、朝からこんなクソ見たいな夢を見なくてはならない? と言うか、その行為をしているのは自分だった。もしや正夢? いや、まさか。自分がこんな事をする訳がない。そんな事を思いながら、煙草を吸う。 部屋は生ゴミ臭く、そんな臭さに煙草の苦い匂いが紛れ込む。肩まである長い髪を近くにあったハサミで切ろうとする。 だが、その瞬間脳内にあの日の記憶が再生されて切ろうとしていた手が止まる。 ハサミを遠くに投げた。酷く吐き気がした。 * 死んでしまう夢を見た。 眼鏡をかけた少年を庇って死んでしまう夢を。何じゃそりゃ、と呆れつつ欠伸をする。 痛みを感じる耳。重みを感じる唇。目立つ薔薇のタトゥー。オレは唇と耳を繋げているチェーンに触れる。ため息をこぼしつつ、壁を見た。 壁全体には笑っているアイツの写真や、青春を謳歌したと言っても過言ではないあの日々の写真が飾られていた。 それを見てオレは、あの日に戻りたいとついもらしてしまう。 もう戻れないあの日々を惜しみながら眠りに付いた。 * 愛せる相手を見つけて、その人と愛し合った夢を見た。馬鹿馬鹿しい。 愛せる相手を見つけられる訳がないだろう? 刻まれたトラウマが消えてくれないのだから。愛せる訳がないし、愛される訳がない。あぁ、吐き気がする。最悪だ。 今日も右目を包帯で覆う。いつになったら、包帯をしなくて良い日が来るのだろうか? 明日? 明後日? 1週間後? それとも、1年? 死ぬまで? あぁ、考えてしまえばきりがない。 早く包帯を巻かなくても良い日が来る事を願って、✕✕は外に出た。 * 育児放棄される。愛を求めてしまう。 完璧でいろと言われる。人形のように生きていく。 認められたくて必死になる。その結果、いじめられて自殺してしまう。 親が不倫して家庭が崩壊する。大切な人が自分を庇って亡くなってしまう。 望んでないのに作成され酷い扱いを受ける。大切な人が亡くなり、生きる希望を失ってしまう。 見たい訳じゃないのに見えないものが見えてしまう。 良い子を演じてたのに気持ち悪いと言われてしまう。だから良い子を辞めたのに、反抗的だと言われて見放されてしまう。 愛されたいのに、愛したいのに、トラウマのせいで、どうしても人間が怖い。 何故だ? 何故、こんな結末になってしまう? 前世で何か過ちを起こしたのだろうか? 何故、その過ちが今世に影響する? 謎が深まると同時に、この理不尽すぎる世界に呆れてしまう。この世の中は理不尽な事ばかり。 そんな理不尽な世界で僕等は――
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!