五流小説家の夢

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 これでは運動して痩せるどころか、ライフワークの執筆すらままならない。 「そうだ、整体へ行こう!」  日頃から肩こりがひどい私は、行きつけの整体店を予約する。 「全身コースでお願いします」  いつもは肩まわり中心の3,000円コースだが、今日はみっちり全身8,000円コース。  出費が重なり痛手だが、これも記念すべき初めての授賞式の為。  後悔はしたくない。  全身をほぐされ夢見心地になりながらも、何故このような事態になったのかを担当の整体師に説明する。 「凄いですね!これからどんどん色々なコンテストで受賞したりして、そのうち有名作家さんになるかもしれないですね!」 「いやいや、まだ1回受賞しただけですからね」  否定しながらも、顔がにやける。 「本が出たら真っ先に買いますよ!その時はサインお願いしますね」  おぉ。サインか。  そうだ、サインも作らなくては。  サラサラっと書けるように、何度も練習が必要だな。  どんなサインにしようか考えていると、あっという間に60分が経過してしまった。  ……ん?  身体は楽になったが……歯が痛いぞ。  ―――何という事だ!
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